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3.抗弁について


1事実の公共性及び目的の公益性
(1)民事上の不法行為である名誉毀損については、その行為が公共の利害に関する事実に係り、もっぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは右行為は違法性がなく、また、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者において右事実を真実であると信ずることについて相当の理由があるときは、右行為は故意もしくは過失がなく、結局不法行為は成立しないものというべきである。▲トップ

(2)事実の公共性
甲第1号証ないし第3号証及び畝記認定事実によれば、本件書籍中には、特に原告のビジネススタイルに対する批判等を中心として、原告の名誉及び信用を毀損する記述が含まれているが、原告は、平成3年4月、束京株式市場において株式上場(店頭登録)し、平成6年6月、ニューヨーク証券市場において株式上場を果たすなど在日外資系企業として、社会において、注目されている企業であるうえ、乙第10号証によれば、第120回国会衆議院における物価等に関する特別委員会(平成3年4月25日)において、マルチ商法の被害問題にする質疑の中で、原告の商法に関する質問がなされていること、乙第1号証及び第12号証によれば、原告の販売する合成洗剤についての環境への間題点を指摘する声もあること、乙第15ないし第20号証によれば、原告の株式公開にあたり、デイストリビューター約1000人に一般投資家とは別の募集枠を設けたことに関して、マスコミ等から特定投資家優遇との間題点が指摘され、主幹事会社の山一証券に対し、大蔵省からの指導が行われたことがあることなどの各事実を認めることができ、これらに、昭和51年、連鎖販売取引等における販売業者と一般消費者との間のトラブルを未然に防止することを目的として、訪問販売法が制定、施行され、さらに、その後、昭和63年に同法が改正され、従前の連鎖販売取引の定義を拡大し、同法の規制の外にあった、マルチ商法類似の商法についても規制を加えていることなどに鑑みるど、原告のビジネス方式、原告の販売する製品等に関する事実は、公共の利害に関する事実であると認めることができる。▲トップ

(3)目的の公益性
前記2項1(3)(1)の認定事実によれば、本件書籍中の各記述部分は、原告のビジネス方式、業績、販売製品などの間題点を指摘し、社会に公表することを主目的として執筆、発行したものであるといえるから、公益を図る目的に出たものと認めるべきである。

原告は、被告らが本件書籍を出版、発行するにあたり、事実について徹底した取材をしなかったうえ、客親的な裏付け資料も存在しなかったのであるから、被告らの本件書籍出版の目的が、成功企業の悪口を書くことで金儲けを図ろうというものであったことが明らかであり、公益目的は存在しないなどと主張するが、本件記録を検討しても、右主張を認めるに足りる証拠はないというべきであり、原告の右主張は採用できない。▲トップ

2.真実性及び真実と信ずるについての相当の理由
(1)甲第1号証ないし第3号証、第6号証、第10号証、第15号証、第17号証、第24号証、第26号証、第37ないし第43号証、第98号証、乙第238号証、証人岩城淳子の証言及び証人堀井剛の証言並ぴに弁論の全趣旨によれぱ、以下の事実が認められる。

(1)原告は、1959年にアメリカで設立されたアムウェイ。コーポレーションの10番目の小会社として、昭和52年(1977年)6月に設立され、約2年間の準備期間を経て、昭和54年5月に営業を開始した。その後平成3年4月、株式を公開し(社団法人日本証券業協会に店頭登録)、平成6年6月、ニューヨーク証券市揚に上場した。平成7年8月末現在、従業員数710名(臨時社員を含む)、ディストリビューター数は約98万組(ただし、更新ディストリビューター数)である。
また、原告の売上高及び経常利益の推移は次のとおりである。
年度
売上
経常利益
平成2年度
954億3900万円
293億3400万円
平成3年度
1230億3800万円
366億2000万円
平成4年度
1232億5300万円
316億200万円
平成5年度
1300億2700万円
322億1100万円
平成6年度
1575億5500万円
399億8600万円
平成7年度
1779億9100万円
442億1300万円
平成8年度
2121億9500万円
514億3300万円
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(2)原告の商法は、問屋、小売店などの一般の流通経路を通した店舗販売を行わず、販売員(ディストリビューター)各人が独立した事業主として、一般消費者に直接販売する方式(ダイレクト・セリング)を取るものである。

一般人は、原告のディストリビューターになるためには、「スターターキット」と呼ばれる商品カタログや伝票等の入った書類一式を原告から購入する必要があり、右スターターキットの購入代金は8240円であるが、資格有効期間内にディストリビューターとなることを解約する場合は、全額返還される扱いとなっている。▲トップ

(3)原告は、ディストリビューターの営業活動などの指針を定めたアムウェイ倫理綱領・行動基準を有しており、これに違反したディストリビューターに対する、解約、護慎一警告処分などの懲罰的制裁規定を設けている。右アムウェイ倫理綱領・行動基準の主な内容は次のとおりである。
    1. 顧客に製品を販売する際に、製品の品質などについて、「安全、無公害」。などと誇大な表現で説明してはならない。
    2. アムウェイの製品や販売促進資料を商品、バザー、展示会などにおいて販売してはならない。また、これらの場所で販売することが明らかな顧客にも販売してはならない。
    3. 顧客からアムウェイ製品の返品の申し入れを受けた場合には、「アムウェイ100パーセント現金返済保証」の制度に従って、速やかにアムウェイ製品の引き取り、交換または製品代金の返金をしなければならない。
    4. 毎月の月刊購入実績の少なくとも70パーセントを小売販売し、不要な在庫を抱えるような製品仕入れをしてはならない。また、系列下位のデイストリビューターに対しても、不要な製品仕入れを強要又は示唆してはならない。
    5. ディストリビューターは、アムウェイ製品等に関する販売促進物を制作したり、日本アムウェイが制作した以外の販売促進物を販売してはならない。
    6. スポンサー(勧誘)活動をする場合には、いかなる場合にも製品の仕入れ、在庫及び販売を相手に強要してはならない。「高収入が必ず得られる。すぐに儲かる、お金持ちになれる」などという誇大な表現で相手をあおったり、誘引してはならない。
    7. 夫婦のディストリビューターが離婚した場合、そのディストリビューター資格は合意により二つに分割することができる。系列上位及び下位のディストリビュ、ーターに悪影響を与えない方法で分割しなければならない。ただし、いかなる場合にもアムウェイの書面による承認を得なけれぱならない。▲トップ

(4)原告商法のボーナスポイントの仕組み
原告の商法におけるボーナスポイントの仕組みは、概ね次のようなものである。

デイストリビューターの収入は、販売した商品から得られる小売利益と各種ボーナス収入の合計である。ディストリビューターは、通常、原告の定めた標準小売価格で商品を販売するが、原告は、ディストリビューターへの卸売り価格に平均30パーセントの小売粗利益を上乗せして、標準小売価格を設定している。原告の各商品には、ポイント・バリュー(PV)と呼ばれる点数が設定されており、月間売上商品のPVを合計することで成績別ボーナス(ファーストボーナス)のパーセンテージが決定される。 成績別ボーナスは、0パーセント(0PV)から最大21パーセント250万PV以上)が予定されており、成績別ボーナス計算の基礎となるPVの算出には、ディストリビューター個人の売上げだけではなく、当該デイストリビューターが勧誘。(スポンサー)したグループ全員の売上げが考慮される。また、各商品にはビジネス・ボリューム(BV)が定められており、月間売上商品のBVの合計に成績別ボーナスのパーセンテージをかけ、成績別ボーナスの金額が決定される。

また、ディストリビューターがスポンサーしたグループが150万PV 以上の商品を売り上げ、21パーセントの成績別ボーナスを達成して独立した場合には、当該デイストリビューターは、原告から4パーセントのリーダーシップボーナス(セカンドボーナス)の支払を受けるとともに、これらを継続することで、さらに各種の資格が認定され、その資格に応じた特典やボーナス(サードボーナス)を獲得することができる。

このように、原告商法のボーナスポイントは、成績別ボーナス(ファーストボーナス)、リーダーシップボーナス(セカンドボーナス)及び資格。によるボーナス(サードボーナス)の3種類で構成されている。▲トップ

(5)原告がディストリビューターに対して配布している「アムウェイ・ビジ ーネス・ガイド」によれば、ディストリビューターの平均年収は、次のとおりである(金額はいずれも推定による概算)。なお、右アムウェイ・ビジネス・ガイド内には、ディストリビューターはビジネス活動において、必ず原告発表の平均年収を使用しなけれぱならず、それ以外の数字を引用することを禁止するとの記載がある。
    1. アクティブニァィストリビューター(小売活動並にスポンサー活動を 共に行っているディストリビューター。・全ディストリビューターの約30パーセント)約19万7000円
    2. ダイレクトディストリビューター(アクティブ。ディストリビューターの約121パーセント、全ディストリビューターの約0226パーセント)以上、約440万円
    3. ダイヤモンド・ダィレクトディストリどユーター(アクティブ。ディストリビューターの約0.04パーセント、全ディストリビューターの約0.012パーセント)以上、約2100万円▲トップ

(6)原告の損益計算書によれば、平成2年度から平成5年度までの間、原告の商品廃棄損として計上されている金額は次のとおりである。
平成2年度
10億8731万2000円
平成3年度
11億221万7000円
平成4年度
16億1612万5000円
平成5年度
16億2510万2000円

 
なお、平成6年度以降の商品廃棄損は、原告が平成6年6月にニューヨ ーク証券取引所に上場したことに伴い、従来の会計方針を変更し、売上原価として処理する方法としたために独立して計上されていない。▲トップ

(7)平成8年1月から10月までの間に、原告が新聞、雑誌、テレビ、ラジオのマスコミ4媒体において行った広告宣伝の費用は、次のとおりである。
新聞
3億2981万1000円
雑誌
1億5235万8000円
テレビ
9353万1000円
ラジオ
0円
合計
5億7570万円

 
(8)国民生活センターからの回答書によれば、原告に関し、平成元年以降平成9年6月17日までの間に国民生活センター相談窓口に対して消費者、末端デイストリビューターないしはそれらの関係者から寄せられた苦情、相談の件数は、7000件以上に上る。国民生活センターに寄せられた苦清、相談の内容は、多岐にわたるが、主なものは、販売方法に関する苦情、相談(勧誘方法が強引なもの、説明が虚偽であったもの、特典を強調して勧誘するもの、他社・他商品を誹誘するものなど)、契約解除や解約に関する苦情、相談(解約に関わるもの、信用性を問うもの、クーリングオフに関するものなど)、商品の品質に関する苦情、相談があり、それぞれ数千件程度の苦情、相談件数になっている。また、国民生活センターに対する右苦情、相談件数は、平成元年には年間数百件程度であったが、平成5年以降年間約1000件を超えるようになり、同種の相談が寄せられる販売業者(業者名が不明市ものを除く)の苦情、相談件数に占める原告の割合は、平成元年から平成9年までの間、概ね10数パーセントから20パーセント程度であり、同種販売業者に関する苦情、相談件数に占める割合は1位である。▲トップ