1 別紙1の各記述部分
(1)マルチ商法の法的用法
- (1)乙第64号証、第72号証、第149号証ないし152号証及び弁論の全趣旨によれば、マルチ商法及び訪問販売法における連鎖販売取引との関係等について、以下の事実を認めることができる。
- マルチ商法とは、マルチレベルマーケテイングプラン(多階層販売方式)の略式訳語で、ピラミツド販売ともいい、もともとはアメリカで始まったねずみ講式販売形態を意味する語である。
- 訪問販売法は、昭和50年頃販売業者と一般消費者との間にトラブルが 多発していた訪問販売、通信販売、連鎮販売取引に一定のルールを設けることにより、販売業者と消費者との間に生じるトラプルを未然に防止することを目的として昭和51年に制定、施行されたものである。また、通商産業省産業政策局によれば、同法における連鎖販売取引のうち悪質なものが一般的にマルチ商法と呼ぱれることがあるとされてい る。
- 連鎖販売取引の具体的システムは、きわめて多様であって一般的な形態を示すことは困難であるが、
特徴としては、
- 加盟者となるため、あるいはより上位のランクの地位に昇格するためには、相当多額の加盟金等の支払い又は多量の商品購入が条件とされていること、
- 加盟者が支払った加盟金等の一部若しくは全部、又は加盟者の商品購入による卸売利益が本部会社以外の加盟者に配分される仕組みとなっていること、
- 加盟者が「1」に掲げる投資を決定する判断材料として、自分が勧誘する他の者等が支払いの投資金の一部を「2」の仕組みによって自分も収受しうることを考慮していることなどがある。
- 昭和51年に制定された訪問販売法では、当時悪質なマルチ商法として 社会問題化していた商品の再販売を連鎖販売取引と定義して規制したが、その後商品以外の権利等についての再販売、役務提供事業あるいは これらのあっせんを行う、マルチ商法類似の商法についても社会問題化した。
この類似商法は、
- 商売の経験に乏しい一般人に対する勧誘を行 うこと、
- リクルートに過度に依存する特殊な利益形態を有すること、
- 多額の負担を必要とすることが多いこと
などといったマルチ商法と同様の問題点を有していたため、昭和63年の改正により、従前の連鎖販売取引の定義を拡大し、これら全てを含める形で連鎖販売取引を定義し直したうえで規制を加えることになった
- (2)これらの事実によれば、マルチ商法の法的な用法については、必ずしも明確とはいえないものの、訪問販売法の改正経緯等に照らすと、一般的な法律上の用法としては、訪問販売法の連鎖販売取引とほぼ同義であると認 めるのが相当である。なお、衆議院法制局・参議院法制局編集「現行法規総覧」(乙第106号証)において、訪問販売法をマルチ販売規制法と省略して用いていることから、行政解釈としても、マルチ商法を右と同様の意味で用いているものと解される。ところで、訪問販売法における連鎖販売取引について、原告は、マルチ 商法及びマルチまがい商法を包括した概念であり、同法にいう連鎖販売取引に該当しない取引をマルチ商法及びマルチまがい商法と呼ぶのは誤りであると主張し、被告は、マルチ商法とは訪問販売法で定義されている連鎖販売取引を意味することが広く社会的に承認されており、マルチまがい商法とは同法に定める要件を充足しないため、法律の規制に触れないが、連 鎖販売取引と同じ本質を有し、社会的問題を有する類似商法のことであると主張する。前述した訪問販売法の改正趣旨からすると、昭和63年の同法改正にあたっては、従来の連鎖販売取引(ここではマルチ商法とほぼ同義)に該当しないマルチ商法類似の商法について規制を加える目的があったものと認めることができるが、この改正をもって、従来の連鎖販売取引(マルチ商法と同義)に該当しない全ての類似商法(マルチ商法と同様の特徴や問題点を有する商法)を連鎖販売取引と定義し、これに同法の規制を直接及ぼすこととした趣旨であるとまでは認めることはできない。右改正は、当時社会間題となっていたマルチ商法類似の商法を規制することを目的としていたものに過ぎず、当時既に事業として存在していたがその問題性が表面化していなかったマルチ商法類似の商法や改正後に新たにマルチ商法と類似の間題点を有するに至った商法などで、同法に定める要件を充足しないものについてまで、規制を及ぼすものではない。この意味において、訪問販売法における連鎖販売取引は、マルチ商法類似の商法を含む概念であるとする原告の右主張は採用できない。
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