いわゆる山岡第2次裁判の判決全文
平成6年(ワ)第4830号損害賠償等請求事件(平成10年7月17日口頭弁論終結)
平成11年1月29日判決言い渡し
当事者
原告は、物品の輸出入、製造、販売及び委託販売等を業とし、ホームケアー製品、ハウスウェァ製品及ぴパーソナルケァー製品などの研究、開発、製造、販売等を行っている株式会社である(以下、原告を単に「アムウェイ」という)。
被告株式会社あっぷる出版社(以下「被告会社」という)は、書籍。雑誌の製造及び販売等を業とする株式会社であり、別紙刊行物目録記載の各出版物を出版、展示、販売、頒布している。
被告北原章(以下「被告北原」という)は、被告会社の代表取締役であり、別紙刊行物目録記載の各出版物の発行者である。
被告山岡俊介(以下「被告山岡」という)は、別紙刊行物目録記載の各出版物の著者である。
判決主文
1.原告の請求をいずれも棄却する。
2.訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第1 当事者の求めた裁判
1.請求の趣旨
- (1)被告らは、別紙刊行物目録記載の各刊行物の出版、展示、販売及び頒布をしてはならない。
- (2)被告らは、原告に対し、本判決確定の日から7日以内に、東京、大阪、中部、西部及び北海道で発行される朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞及び産経新聞並ぴに東京新聞の朝刊各紙に各1回、縦17センチメートル、横19センチメートルの枠組みで14ポイント活字を以て、別紙「取消並ぴに謝罪広告」と題する書面記載の謝罪広告を掲載せよ。
- (3)被告らは、原告に対し、連帯して金1000万円及びこれに対する平成6年5月26日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
- (4)訴訟費用は被告らの負担とする。
- (5)右3項につき仮執行宣言
2.請求の趣旨に対する答弁
第2 当事者の主張
1.請求原因
- 当事者
- 各書籍の出版等
- 名誉毀損
- 本件書籍中には、原告の業績、営業手法、販売製品の性質などについて、別紙 1ないし5記載の各記述部分(以下、これらを合わせて「本件各記述部分」ともいう)があるが、これらは、次のとおり、原告の信用及び名誉を毀損するものである。
4.被告らの責任
被告山岡は、別紙1ないし5記載の本件各記述部分を含む別紙刊行物目録記載の本件書籍を執筆し、被告北原は、本件書籍を発行し、被告会社は、本件書籍を出版、販売した。したがって、被告山岡は本件書籍の執筆者として、被告北原は本件書籍の発行者として、被告会社は本件書籍の出版販売者として、それぞれ原告に対し、不法行為責任を負う。
5.原告の損害
原告は外資系企業であって、日本国内における特別の基盤を持たないため、その営業基盤は原告自らが築き上げてきた高い信用と社会的名声であるから、原告に対する信用、名誉の侵害は、原告の営業基盤そのものを脅かすものである。実際にも、本件書籍の発行、販売により、原告の平成5年から平成7年までの間の3年間の更新デイストリビューター数の対前年度比伸ぴ率が一桁台となったほか、平成4年8月には売上高の伸び率が急落するなどの影響を受けており、原告らが本件書籍の発行、販売により受けた損害は甚大である。被告らの不法行為による原告の名誉、信用の毀損による損害は、被告らが本件書籍の出版、展示、販売及び頒布を中止したうえ、別紙のとおりの謝罪広告を掲載し、かつ、損害賠償金を支払うことによって償うのでなければ、回復することはできず、原告の被った損害は、少なくとも1000万円を下らない。
6.損害賠償
よって、原告は、被告らに対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、本件書籍の出版、展示、販売及び頒布の差し止め及び別紙「取消並びに謝罪広告」と題する書面記載の謝罪広告の掲載並びに連帯して1000万円及ぴこれに対する訴状送達の日の後である平成6年5月26日から支払済みに至るまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うことを求める。
2.請求原因に対する被告らの認否
1.請求原因1及び2の事実はいずれも認める。
2.同3の事実のうち、本件書籍に別紙1ないし5記載のとおりの本件各記述部分が掲載されていることは認めるが、その余はいずれも否認ないし争う。被告らは、本件書籍において、訪問販売法11条に規定されている連鎖販売取引をマルチ商法と定義し、原告の商法が同法11条の要件を欠きマルチ商法には当たらないが、これと同種の社会的間題を有していることを示したうえで、原告の商法について語られているアメリカンドリーム、高所得神話への疑間を指摘し、消費者に対し原告のビジネスに参加した場合の危険性についての啓蒙をすることを目的として執筆、発行、出版したものであり、本件各記述部分は、いずれも主要な部分に関して、客観的な真実に基づいて述べられた正当な批評であり、論評としての域を逸脱したものといえないことが明らかである。
3.請求原因4の事実のうち、被告らが本件書籍の執筆、発行、出版、販売をしたことは認めるが、その余はいずれも否認ないし争う。
4.請求原因5の事実は否認ないし争う。
3.抗弁
- 1.事実の公共性及び目的の公益性
- 原告は、独自の販売方法を用いた営業方法により、高成長を続け、企業規模を拡大している上場企業であり、多数の関係者を有しているなど社会的な影響力も大きい。本件書籍は、原告の商法について、その凄態を明らかにしたうえで、訪問販売法上の連鎖販売取引と同様の問題点を有するマルチまがい商法であると指摘し、一般消費者に対する注意を促すものであり、被告らは、本件書籍中で公共の利害に関する事実を論じ、公益を図る目的で、本件書籍の執筆、出版、発行を行ったものである。
- 2.本件各記述部分の真実性等
4.抗弁に対する認否
1.抗弁1の事実については否認ないし争う。
被告らは、本件各記氷部分の前提事実についての調査を行わず、的確な客観的裏付資料がないのに本件書籍を執筆、出版、発行したものであり、本件書籍において、原告がねずみ講的なマルチ商法またはマルチまがい商法を行う企業であると表現することにより、原告が悪徳商法、違法行為を行っている企業であるとのイメージを世間一般に定着させようとしたものである。また、被告らは、本訴係属中にも、原告を誹謗中傷する別の書籍を発行、出版するなどしている。これらの事情に鑑みれぱ、本件書籍の執筆、出版、発行は、公益を図る目的でなされたものでないことが明白である。
2.抗弁2の事実は全て否認ないし争う。
本件各記述部分は、いずれも前提事実が虚偽のものであり、真実と信ずるについての相当な理由は全くない。
第3 証拠
- 証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録各記載のとおりであるから、これらを引用する。
理由
1.請求原因1(当事者)及び2(本件書籍の出版等)の各事実は、当事者間に争いがない。
2.請求原因3(名誉毀損)の各事実のうち、本件書籍中に、別紙1ないし5記載のとおりの紅記述部分(本件各記述部分)が掲載されていることは、当事者間に争いがない。
- なお、原告は、別紙1の各記述部分は、原告の商法をマルチ商法及びマルチまがい商法であると記述するものである旨主張するが、別紙1記載のとおりであり、原告の商法をマルチ商法であると記述した部分は存在せず、いずれもマルチまがい商法であると記述しているものであることが明らかである。そこで、まず、本件各記述部分が、原告の社会的評価及び名誉を低下させる名誉毀損表現といえるか否かについて判断する。
- 1.別紙1の各記述部分
- 3.抗弁について
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