共用サーバー6台の日次セキュリティ監視レポート(2026年6月7日分)

logwatch

マルチサーバー共用ホスティングの日次logwatch分析記録。 cPanelサーバー5台+DirectAdminサーバー1台の計6台を対象に、セキュリティ・メール・インフラの状態を横断的に点検した。


サーバー横断サマリー

サーバーパネル判定配信数スパム率FWブロックSSH侵入ディスク
SV-1cPanel良好1,66134%10,824なし16%
SV-2cPanel注意1,62857%11,015なし30%
SV-3cPanel警告56470%11,559なし28%
SV-4cPanel注意1,37754%23,577なし35%
SV-5cPanel注意2,78615%10,712なし42%
SV-6DirectAdmin注意2,09921%21,861なし8%

全サーバー共通:SSH侵入ゼロ、Dovecotブルートフォースゼロ。


1. スパム状況 — cPanelとDAで明暗くっきり

本日最大の発見は、cPanelサーバーとDirectAdminサーバーのスパム率の差。

パネルサーバー数スパム率レンジ
cPanel5台15%〜70%
DirectAdmin1台21%

cPanelサーバー側の特徴

  • SV-3が**スパム率70%**で全サーバー中ワースト。clean 560通に対してspam 1,287通
  • 50通超のスパムを受けていたアカウントは全6台合計で21アカウント
  • 単一アカウントのワーストは191通(SV-2のあるアカウント、clean 1通のみ)
  • 次点はclean 0通・spam 123通で、完全にスパムの受け皿と化していたアカウント

転送設定の確認結果

高スパムアカウント計14件を調査した結果、全アカウントで転送設定(vfilter)・catch-all(defaultaddress)ともに未設定だった。

これは重要な意味を持つ。スパムがメールボックスに溜まるだけで、外部(特にGmail)への転送が発生していないため、共用IPの評判への直接的なダメージはない

system filter(スパム破棄ルール)の配備状況

Exim system filterで X-Spam-Status: Yes のメールを転送前に破棄するルールの設置状況を確認。

  • SV-4:運用者が手動で seen finish ルールを設置済み
  • SV-3:チームが正規パス(/usr/local/cpanel/etc/exim/sysfilter/options/)で設置済み
  • SV-5:spamルール2件あり

将来、いずれかのアカウントで転送設定が追加されても、スパムが外部に漏れない防御層が機能している。


2. ポートスキャナー 176.65.148.58 — 3台で対処

発見

SV-4のlogwatchで、単一IPから13,738パケット・13,733種のTCPポートに対するフルポートスキャンを検出。同一IPがSV-5(119パケット)、SV-2(140パケット)にも到達していた。

対処

到達が確認された3台でcsf -dによる永続ブロックを実施。残り2台(SV-1、SV-3)には到達していなかったため対応不要。

サーバーパケット数対応
SV-413,738csf.deny追加 ✓
SV-5119csf.deny追加 ✓
SV-2140csf.deny追加 ✓
SV-1未到達
SV-3未到達

教訓

logwatchの横断分析をしていなければ、SV-5とSV-2への到達は見逃していた可能性がある。同一攻撃者が複数サーバーを狙うパターンでは、1台で検出したら全台をチェックする運用が有効。


3. SMTP認証ブルートフォース — DAサーバー固有の課題

発見

DirectAdminサーバー(SV-6)で、5,378回のSMTP認証失敗を検出。攻撃元は3,037ユニークIP。特定のアカウント名が集中的に狙われており、最多は367回。

cPanelサーバーではEximセクションがlogwatchに出ないため、同等の攻撃があっても数字として見えにくい構造的な違いがある。

防御状況

CSFのLF_SMTPAUTH=5(5回失敗で永続ブロック)が有効に機能しており、攻撃者は自動的にブロックされていた。csf.denyは672/1,000で余裕あり。


4. HTTPプローブ — .envファイル探索

発見

SV-6(DirectAdmin)のhttpdログに、パストラバーサル攻撃(/?file=../../../../var/www/html/.env)がHTTP 200を返した記録があった。

.envファイルにはDB認証情報やAPIキーが格納されることが多く、漏洩すれば深刻な被害につながる。

調査結果

  • /var/www/html/.env → 存在しない
  • /home/ 以下の全ディレクトリ → .envファイル不在
  • 実際のHTTPレスポンス → 403 Forbidden

logwatchのHTTP 200表示は、アプリケーション層のデフォルトレスポンスによるもので、ファイル内容は露出していなかった。

教訓

logwatchの「HTTP 200」だけで安心も焦りもできない。実際にファイルの存在を確認し、現在のレスポンスコードを検証するところまでやって初めて安全と言える。


5. SSH — PasswordAuthentication=yesの影響

状況

6台中1台(SV-5)のみPasswordAuthentication=yesを維持している(特定ユーザーのアクセス用途で意図的な設定)。

結果として、SV-5のSSH認証失敗は798件で、他サーバー(8〜34件)と比べて桁違いに多い。特定のcPanelアカウント名が複数IPから狙い撃ちされていた。

確認結果

  • 該当ユーザーのシェル → noshell(ログイン不可)
  • SSHのDenyUsersにも明示的に登録済み
  • パスワードハッシュ → SHA-512(強度は十分)

二重防御が効いており、パスワードが破られてもSSHログインは不可能。ただし、攻撃面が広い状態は変わらないため、長期的には鍵認証への移行が望ましい。


6. Dovecot — 全サーバーで平穏

項目結果
ブルートフォース全6台で0件
killed(異常停止)SV-3で1件(既知の誤検知パターン)
auto-restart override全cPanelサーバーに配備済み

SV-3の「Dovecot was killed, and not restarted afterwards」はlogwatchの誤検知。実際にはSIGHUPによるリロード処理であり、auto-restart override(systemd)も配備済みのため実害なし。


7. クライアント対応 — メーラー設定誤り

DA移行後のユーザー名形式問題

cPanelからDirectAdminへ移行したドメインで、クライアントのメーラーが旧形式のユーザー名のまま接続し続けるケースが2件発生。

パターン原因日次エラー数
ドメイン名/ユーザー名 形式cPanel形式のまま未変更152回
氏名をそのまま入力(スペース含む)メーラーの設定ミス51回

2件目については、6月2日に通知メールを送信し、クライアントから「修正済み・テスト完了」の返信があった。しかしサーバーログを確認すると同一IPから6月7日もエラーが継続していた。

IP履歴を調査したところ、5月6日から1ヶ月以上、毎日60〜80件のエラーが出続けていることが判明。クライアントが「修正した」のは送信(SMTP)側のみで、受信(POP3)側のユーザー名が未修正と推定。

最新の6月7日付ログを添付した再通知メールを送信した。

教訓

  • クライアントが「修正済み」と報告しても、ログで実際に解消されたか検証することが重要
  • SMTP/POP3/IMAPは別々に設定される場合が多く、「送信テストOK」は受信側の修正を保証しない
  • 接続元IPの履歴分析で、「別端末の問題」か「同一端末の未修正」かを切り分けられる

8. インフラ指標

LFDメモリ消費

サーバーLFDメモリピークcsf.deny件数
SV-3752.3 MB1,669
SV-5751.4 MB711
SV-1669.1 MB
SV-2603.1 MB865
SV-488.4 MB762

SV-3とSV-5が750MB超え。csf.deny件数との相関は弱く(SV-5は711件でも751MB)、ログ監視プロセスの接続追跡がメモリ消費の主因と推定。IPSET有効なのでiptablesルール自体は軽量。経過観察。

ディスク使用率

全サーバー42%以下。最も余裕があるのはSV-6(DA)の8%、最も高いのはSV-5の42%。いずれも問題なし。


本日の対応タイムライン

時刻対応内容
06:43SV-4: 176.65.148.58 csf.deny追加
SV-4: system filter確認(ジージ設置済み)
SV-3: 転送・catch-all・system filter確認(全て対応済み)
SV-6: .envプローブ調査(安全確認)
SV-6: SMTP認証保護確認(LF_SMTPAUTH=5 正常稼働)
SV-6: UDP/24441自己通信調査(現在停止)
SV-6: メーラー設定誤りのクライアント再通知メール送信
07:15SV-5: 176.65.148.58 csf.deny追加
07:20SV-2: 176.65.148.58 csf.deny追加
SV-5: dreamdirectユーザーSSH保護確認(noshell + DenyUsers)
SV-1: 全項目正常、対応不要

まとめ

6台の共用サーバーに対して日次logwatch分析を実施し、以下の成果を得た。

即時対応(完了)

  • ポートスキャナーのcsf.denyブロック(3台)
  • .envプローブの安全確認
  • SMTP認証保護・SSH保護の正常動作確認
  • クライアントへのメーラー設定修正の再通知

構造的な知見

  • cPanelサーバーのスパム率(15〜70%)はDAサーバー(21%)より総じて高い
  • 転送設定がないことでIP評判への直接ダメージは回避されている
  • system filterの予防的設置が「将来の事故」を防ぐ重要な防御層になっている
  • 同一攻撃者の複数サーバー横断パターンは、1台の検知を全台に展開する運用で対処
  • クライアントの「修正済み」報告はログで裏取りするまで確定しない
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